たとえ君が・・・
渉は病院のすぐ近くのアパートに住んでいた。
呼び出されれば車で3分ほどで病院に駆けつけることができる。
家に帰ることもあまりできない忙しさもあるが、自分自身の気持ちをリセットするためにもと時間を見つけては帰宅するようにしていた。
「お疲れさまでした。」
多香子が頭を下げると渉は多香子に手をひらひらと振り去って行った。

朝の寝ぐせ頭のままの渉の後ろ姿に多香子の心がじんわりとあたたかくなる。

昔から変わらない。自分の身なりよりも患者に時間を使うような人だ。

ゆっくり休めますように・・・そんなことを考えながら多香子は仕事へ戻った。
< 22 / 306 >

この作品をシェア

pagetop