たとえ君が・・・
「瀬戸さん。今日、遅くなります。」
渉の言葉に多香子が渉を見る。
「ミーティングがあるんだ。」
「・・・わかりました。」
残念そうな表情の多香子に渉はふざけて
「寂しい?」
と聞くとものすごく鋭利なまなざしを向けられて、渉は苦笑いした。

「橘先生~」
くねくねした声で診察室に入ってきたのは新人の助産師の工藤美咲。
「322号室の丸山さんなんですが朝から熱があって。診察をお願いしたいんですけど~」
美咲を見る多香子の視線はかなり鋭い。
「何度?」
「朝6時の検温で37.8°、午前11時の検温で38.2°です。」
「わかりました。診察後なので午後1番で診察します。」
「お願いします。」
美咲は頭を下げると渉ににっこりと微笑みを向けた。
「先生、ごみが。」
渉の肩に何かがついていたようで美咲が渉の肩に触れる。
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