たとえ君が・・・
「結婚の準備も進んでるけどさ。一度ちゃんと話したいことがあったんだ。それから、俺から多香子にお願いもある。」
「なに?」
渉は穏やかな表情で話しているつもりでも、多香子には渉の緊張が伝わっていた。
「俺、うまく話せないかもしれないんだけど、正直な気持ちを多香子に聞いてほしい。それでもしも多香子を傷つけたとしたらごめん。でも、ちゃんとその傷をいやす責任をとるから聞いてほしいんだ。」
不安そうな表情の多香子は目を大きく開き、渉の話に注目している。

「まずはお願いがある。」
「なに?」
「一度、俺に診察させてほしい。」
「診察?」
「そう。この前気になる腹部のしこりを見つけたんだ。最近の顔色も気になるし、ほかにも体調で気になることがある。だから早めに診察させてほしい。」
「・・・私、元気だけど?」
「でも、頼む。」
渉の真剣な表情に多香子は少し考えてから頷いた。
「ありがとう。」
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