たとえ君が・・・
渉が少し微笑む。
「それから、もう一つは多香子の気持ちを聞いておきたいんだ。」
「ん?」
「今、多香子は過換気症候群の薬飲んでるだろ?」
「うん。」
「多香子のことを支えたいって思ってる。だから、多香子の心の状態も把握しておきたいんだ。」
「・・・」
過換気症候群・・・。多香子は慶輔が亡くなって赤ちゃんを失ってから発症した。
月に2回心療内科に通っている。不安感から発作を起こす多香子は抗不安薬を服薬している。その薬の処方によって脳の機能をコントロールして発作をおきにくくしている状況だ。
でも一番の予防は心の状態を安定させて過ごすことだ。発作の要因である物事を改善したり、原因をわかり対処するためにはまずは何が要因となっているのかを知らなくてはならない。

渉は多香子が一緒にいるときにも薬を服薬しているところを見てきていて、薬の種類自体は把握していた。しかし、詳しい治療の状況までは話しては来なかった。

「完治は難しくてもある程度過換気症候群はコントロールすることができるかもしれない。俺も、その役に立てるかもしれないだろ?だから、ちゃんと俺にも気持ちを話してほしい。どんなことが不安なのか、どんなことを考えているのか教えてほしいんだ。」
「・・・」
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