たとえ君が・・・
多香子の中に一気に過去の記憶がよみがえる。

慶輔と命を授かれた奇跡を喜んだこと。
自分のお腹に触れながら最高に幸せそうな表情をしていた慶輔のこと。
名前を考えたり、性別をあてっこしたり。エコー写真を大切に大切に抱きしめていた慶輔の顔。
生まれる瞬間に立ち会えないことを悟った慶輔の悔しそうな表情。
遺して死んでいくことを涙を流して慶輔が自分のお腹に謝っていたこと。


そして・・・慶輔を。

そして・・・赤ちゃんを失った時のことを・・・。



多香子の瞳から次々に涙があふれだした。
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