たとえ君が・・・
「聞いてほしい・・・」
多香子は少し体を渉からはなして渉の目をまっすぐに見つめた。

「・・・」
渉は多香子が自分に話すためにどれだけの覚悟がいったかを想うとこれ以上止められなかった。

どんな話でも受け止める・・・覚悟を決めて渉も多香子の話を止めずに聴きだした。

「もしも、私ががんだったら・・・」
多香子が涙に言葉を詰まらせる。
渉は多香子の背中をさすりながら話を聞いている。
「・・・私と同じ思いを渉にさせられない・・・」
慶輔の隣にずっと寄り添っていた多香子が病院の屋上で涙を流している姿や、慶輔が亡くなり悲しみに涙を流す多香子を渉は思い出した。
「だから・・・もしも私が・・・ガンだったら・・・」
「別れない。離れないぞ俺は。」
渉が多香子に話すと多香子は目を閉じて首を横に振った。
「ダメだよ・・・無理だよ・・・」
「離れない。多香子があっち行けって言っても、俺は離れてやらない。絶対に離れない。」
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