たとえ君が・・・
気のせいかもしれないと多香子は部屋を出ようとした。
でも、気になる・・・。

多香子はもう一度ベッドの方へ戻った。明かりを机に置いて調節し、そっと布団をめくった。
引継ぎではNSTを付けたばかりでその時には何も異常はなかった。

患者のお腹にそっと触れてみる。

その時何か違和感を感じて視線を移すとじんわりと真っ赤な血液が布団に滲んでいることに気が付いた。

多香子はすぐにナースコールを押す。
「先生を呼んでください。涌井さん大量に出血しています。胎盤剥離の疑いがあります。」
早口にそう告げると多香子は涌井に声をかける。
「涌井さん。涌井さん。」
しかし患者に反応はない。
次の瞬間『ブチンッ』と不吉な音が病室に響いた。

完全に胎盤が剥離した疑いがある。
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