たとえ君が・・・
みるみるうちにベッドの下にまで真っ赤な血液で染まっていく。
多香子は患者の体制を変え、バイタルをチェックする。

モニターに視線を移した瞬間、モニターから不吉なアラームが鳴り始める。
多香子は患者の上にまたがり心臓マッサージを始めながら携帯を耳に当てた。
『はい』
すぐに電話に出たのは渉だ。
「涌井さんが胎盤剥離の疑いで大量出血を起こしています。心停止していて現在マッサージ中です。指示ください!」
心臓マッサージの手を止めないまま多香子は渉に指示を仰ぐ。
電話の向こうで何やらがたがたと音が鳴り渉が病院に向かっていることが多香子にも分かった。
『そのまま心臓マッサージを続けて。今夜の担当医は矢口先生だな。直接連絡する。3分で行く。』
渉の声多香子は祈るような気持ちになる。
『多香子、すぐ行くから。繋いでくれよ。』
「了解。」
多香子は心臓マッサージをする手に力を込めた。
「涌井さん!頑張ってください。赤ちゃんに会いたいんでしょう!頑張って。」
多香子は祈る気持ちで渉を待った。
< 26 / 306 >

この作品をシェア

pagetop