たとえ君が・・・
「はぁっごほっ・・・ごほごほっ・・はっ・・・」
あまりの息苦しさに座り込む。指先が震えて感覚がない。足先もしびれている。

『バンッ!!』
その時、乱暴に屋上の扉が開けられた。

しゃがみこんだ多香子の体が力強く支えられる。

震える両手を大きな大きな手が包み込む。

熱いくらいの体温に包まれて多香子は目を閉じる。

すべてをゆだねて多香子は目を閉じる。

何も言葉はない。
でもそれが誰なのかが多香子にはすぐにわかる。

力強くただただ抱きしめられる。

こうして抱きしめられるのは、はじめてじゃない。
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