たとえ君が・・・
飯村良助はそんなことを考えながら屋上で一人煙草を煙にしていた。

こうして煙草を吸うようになったのは離婚を決めてからだ。

ずっと子供が欲しくて妻と不妊治療をしていた良助は妻の体を考えて煙草を辞めていた。

でも、不妊治療を初めて8年が経っても子供を授かることができなかった。

治療を進めながらどんどんと夫婦の距離が離れていった。妻は妊娠できない現実にどんどんと落ち込み、治療で体調が悪く家事も行えない日が続き仕事もやめた。
良助は不妊治療の費用を稼ぐためにも残業を率先して行い休日出勤もした。その手当ても貴重な治療費だった。

はじめは命を授かるためだと苦ではなかったのに、全くいい結果が出ない現実に8年の月日が経つ頃にはお互い心も疲れ切っていた。

若葉からもう無理だといわれたとき、本当は子供なんていらないといいたかった。だからそばにいてほしいといいたかった。
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