たとえ君が・・・
若葉は離婚を決めてから仕事を始めた。近所の印刷会社の事務だ。今日は仕事は休みなのか?

一緒に暮らしていないと彼女が仕事かそうでないかすらわからない。

「入るぞ?」
遠慮がちに声をかけて良助がリビングへ向かうと机の上に良助がメールしていた印鑑が置かれていた。ふとキッチンが目に入るとスポーツドリンクが並べられている。

具合でも悪いのか?

俺と顔をあわせたくなくて部屋にいるのか?

『ガタンッ』
良助の耳に寝室から大きな音が聞こえて思わず寝室へ向かっていた。
「若葉っ?」
とっさに寝室に入り若葉の名前を呼んでしまった自分の行動を少し後悔した良助の目に飛び込んできたのは真っ青な顔で寝室のベッドの下にうずくまる若葉の姿だった。
「おいっ!」
すぐに良助が若葉に近づきその肩を抱く。
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