たとえ君が・・・

「ご迷惑をおかけしました。」
多香子は呼吸が完全に落ち着くとそう言って渉から体を離した。

多香子の体を後ろから抱きしめるようにして支えていた渉の腕の中から多香子が抜け出す。

「仕事に戻ります。」
「少し休んだほうがいい。」
「大丈夫です。」
多香子はそう言って立ち上がろうとしてガクンと膝が折れた。

すぐに渉は多香子を抱き留める。
「すみません。」
「まだ、手足のしびれは改善してないんだろ？点滴するから来い。」
「大丈夫です。」
「ダメだ。そんなんじゃ勤務させられない。」
「・・・」
まだ夜勤の勤務時間は半分以上残っている。その中で早退するよりは点滴をして戻ったほうがいいとすぐに多香子は考える。

「ほら。行くぞ。」
渉が多香子の手を握る。