たとえ君が・・・
「院長?」
多香子に呼ばれて渉はふと多香子の方を見た。
「大丈夫ですか?」
多香子の言葉に渉はおまえがだろう・・・といいたいのをぐっとこらえる。
「あぁ。」
「じゃあ、私はこれで。」
多香子が渉に頭を下げてその場を去ろうとする。

「多香子」
渉がその名前を呼ぶと多香子はゆっくりと振り返った。

「飯でも食いに行かないか?」
「・・・やめておきます。」
「いいだろ?飯くらい。おごるから付き合え。」
渉はそういうと多香子の返事を待たずに歩き出した。
このくらい強引に誘ったほうが多香子は一緒に来ると渉は知っていた。

すたすたと先を歩く渉の後ろを多香子は仕方なくついてきた。
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