【番外編】イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「わっ」
地面がグラリと傾き、手すりの向こうにある海へ投げ出されそうになる。
――落ちる……!
「萌!」
伸びてきた腕が私の腰に回り、力強く引き寄せられる。
心臓がバクバクと鳴る音が私の中で響いている。
頭が真っ白になっていると、徐々に自分以外の体温に包まれていることに気づく。
「寿命が縮まるかと思ったぞ」
近い距離で額の声が聞こえて、私は弾かれるように顔を上げた。
そっか、学が助けてくれたんだ。
そういえば……。
「今、萌って呼んだ?」
目を瞬かせていると、学は視線を逸らしながら眼鏡を指で押し上げている。
「聞き間違いじゃないのか」
「そんなわけないよ! 萌、耳いいもん」
問い詰めていると学はゴホンッと咳払いして、腰を上げると私に手を差し伸べる。
「ほら立て、ここにいたら危険だ。なにか、この船で起こったようだからな」
「はぁーい」
うまく流されてしまったけれど、学の言う通りさっきの揺れはただ事じゃない。
私は学の手を取って立つと、一緒にホールに向かおうとした。
でも、その途中の廊下で大勢の乗客があふれ返っていて、前に進めなくなってしまった。
「なにかにぶつかって、船に穴が開いたらしいぞ!」
「最上階の甲板にある救助ボートに行きましょう」
悲鳴に混じって聞こえてきた乗客たちの声。
私は思わず隣にいる学の手を握る。
「どうしよう……この船、沈むのかな?」
「しっかりしろ。沈むにしても、大きな船だ。すぐにってわけじゃない」
断言する学は冷静で、自然と不安が薄れていく。
「ここで待っていても埒があかないな。俺たちは別ルートから、救助ボートがある甲板まで上がるぞ」
学が手を引いてくれるけれど、私はその場から動き出せない。
だって、この先にはお母さんとお父さんがいたホールがあるんだ。
ふたりの無事を確かめずに、自分だけ逃げるなんてできない。
そんな私の気持ちを察してくれたのかもしれない。
「危険ではあるが、一階下に下がって向こう側の道に上がれば、ホールに行ける」
学は私に覚悟を問うような目を向けてくる。
「まさか……一緒に来てくれるの?」
「花江をひとりで行かせるわけにはいかないだろう。それにお前だけだと、あっけなく海に沈みそうだ」
当然だろう、と言わんばかりの学に私の胸は熱くなる。
地面がグラリと傾き、手すりの向こうにある海へ投げ出されそうになる。
――落ちる……!
「萌!」
伸びてきた腕が私の腰に回り、力強く引き寄せられる。
心臓がバクバクと鳴る音が私の中で響いている。
頭が真っ白になっていると、徐々に自分以外の体温に包まれていることに気づく。
「寿命が縮まるかと思ったぞ」
近い距離で額の声が聞こえて、私は弾かれるように顔を上げた。
そっか、学が助けてくれたんだ。
そういえば……。
「今、萌って呼んだ?」
目を瞬かせていると、学は視線を逸らしながら眼鏡を指で押し上げている。
「聞き間違いじゃないのか」
「そんなわけないよ! 萌、耳いいもん」
問い詰めていると学はゴホンッと咳払いして、腰を上げると私に手を差し伸べる。
「ほら立て、ここにいたら危険だ。なにか、この船で起こったようだからな」
「はぁーい」
うまく流されてしまったけれど、学の言う通りさっきの揺れはただ事じゃない。
私は学の手を取って立つと、一緒にホールに向かおうとした。
でも、その途中の廊下で大勢の乗客があふれ返っていて、前に進めなくなってしまった。
「なにかにぶつかって、船に穴が開いたらしいぞ!」
「最上階の甲板にある救助ボートに行きましょう」
悲鳴に混じって聞こえてきた乗客たちの声。
私は思わず隣にいる学の手を握る。
「どうしよう……この船、沈むのかな?」
「しっかりしろ。沈むにしても、大きな船だ。すぐにってわけじゃない」
断言する学は冷静で、自然と不安が薄れていく。
「ここで待っていても埒があかないな。俺たちは別ルートから、救助ボートがある甲板まで上がるぞ」
学が手を引いてくれるけれど、私はその場から動き出せない。
だって、この先にはお母さんとお父さんがいたホールがあるんだ。
ふたりの無事を確かめずに、自分だけ逃げるなんてできない。
そんな私の気持ちを察してくれたのかもしれない。
「危険ではあるが、一階下に下がって向こう側の道に上がれば、ホールに行ける」
学は私に覚悟を問うような目を向けてくる。
「まさか……一緒に来てくれるの?」
「花江をひとりで行かせるわけにはいかないだろう。それにお前だけだと、あっけなく海に沈みそうだ」
当然だろう、と言わんばかりの学に私の胸は熱くなる。