かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
思わぬことを言われて動きが止まる。変に態度に出すと誤解されかねない。そう思って私はわざと明るく笑ってみせた。

「そんなこと考えたこともないですよ。もし、万が一誰かが盗んだとしても、私、恭子さんじゃないって思ってますから」

「どうして?」

「どうしてって言われても……なんかうまく説明できないんですけど、このお店のことに一生懸命で、私と一緒に頑張ろうって言ってくれたじゃないですか、だから……信じたいんです。恭子さんのこと。あっ、もちろん恭子さんだけじゃなくて猪瀬君やほかのスタッフの人たちのこともですよ」

誤解を招かないように言葉をつけ足してにこりと笑う。すると、恭子さんはホッとしたような顔をしたかと思うと急に目尻を拭って笑った。

「もう、ほんと……あなたって人は……そういうのをお人好しって言うのよ? でもね、嫌いじゃないわ。ありがとう、私のことを信じてくれて。芽衣さんの大事なものがなくなってからなんだかモヤモヤしちゃって」

「すみません、私のことで……」

「ううん、違うの。ただスッキリさせたいっていうか、今は見つかることを祈りましょう、ね?」
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