かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
白黒はっきりさせたいのは私も同じ。いつまでも闇雲の中にいたくない。私は恭子さんと良き仕事仲間としての絆を改めて実感した。そして、温かい気持ちに身が包まれていると、恭子さんがふいにじっと私の胸元を凝視した。

「あら、綺麗なネックレスじゃない」

「あ、これは……」

長嶺さんからプレゼントされたペリドットのネックレス。私はそれを毎日身に着けていた。プレゼントされて数日経っているけれど、会社の人たちは特に気づく様子もなく、これについて誰も突っ込んでこなかった。それなのに、やっぱり恭子さんは目敏い。

「えーなになに? 彼氏からのプレゼントでしょ?」

恭子さんはこの手の話が大好きらしく、彼氏ってどんな人?いくつの人?だとか、あれこれ詮索された。

困ったな……なんて答えればいいんだろう?

長嶺さんは彼氏でも何でもないし、夫でもない。お試し婚の相手というだけだ。けれど、私は結婚する気もないし、近々長嶺さんに引導を渡す予定だ。とにかく話題を変えたい。

『あら、芽衣さん知らなかった? 長嶺部長は以前――』

そこでふっと頭によぎったのは、先ほど恭子さんが長嶺さんの過去について言いかけたあの言葉だった。
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