かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
彼のことを考えるだけで胸が切なくキュッと締めつけられる。顔色を窺えば、眉ひとつの動きで機嫌を図ろうとしてしまう。一緒にいることが楽しい、誰にも取られたくない。この感情は紛れもなく“恋”だ。

長嶺さんが好き。

それは私が賭けの勝負に負けたことを意味する。けれど、私はそこでずるいことを考えた。

自分の気持ちを長嶺さんに伝えずに隠し通せばいい。彼の前で好きになったと白状しなければ賭けに負けたことにはならない。

私のひねくれた部分とプライドがどうしても邪魔をする。素直になれない子どもみたいだ。

「ありがとうございます。もし、長嶺さんからアドバイスをもらってなかったら……未だに無我夢中だったかもしれません」

潤んだ瞳で長嶺さんを見上げると、彼は一瞬唇を噛んだ。そして。

「あっ……」

次の瞬間、勢いよくそして力強く私は長嶺さんの胸の中に引き込まれていた。長嶺さんからプレゼントされた胸元に光るネックレスが揺れてドキリとする。

「俺はおあずけを食らってるんだぞ、そんな目で……俺を見るな」

切なげに掠れる声、それが耳朶にかかって身震いする。躊躇するまもなく長嶺さんの唇が押しつけられ、呼吸さえも貪られる。

「うぅ……んっ」
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