かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
長嶺さんの獰猛な一面がキスの仕方に現れている。髪の中に埋めた手が私の頭を撫で、そのまま頬へ移動していく。

「どうして抵抗しないんだ?」

余裕を失いかけているその目に問われ、私はぐっと息を呑んだ。

どうして? 自分でも、わからない、けど、ただ無性に長嶺さんの温もりに縋っていたい。ずっと……。

「わかりません」

本当はわかっているくせにわからない振りをした。長嶺さんはそれを聞くと不敵にニヤリと口元を歪めた。

「なら、わからせてやる」


キスで拘束されながら、長嶺さんの寝室へ転がり込むとそのままベッドへ押し倒された。弾む身体の上に長嶺さんが覆いかぶさってきて、首筋を吸われる。

「これ、ずっとつけてくれてるんだな」

ネックレスのチェーンを人差し指でつっと掬い上げ、長嶺さんが満足げに笑みをこぼす。

「長嶺さんが一緒にいてくれているような気がするんです」

「馬鹿だな、君は……そんなこと言って、煽ってると思われてもいいのか?」

普段、長嶺さんは紳士で物腰柔らかな人だと思っていた。けれど、こんな強引で雄々しい一面を見せられて、それに流されている自分に戸惑いと恍惚感を覚えた。
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