かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
全身にアルコールが回って、頭の回転も緩慢になる。いつもならこんなことないのに。
「きっと長嶺はまだ自分のことを全部君に話してないはずだよ。それでも彼を信じて結婚するの?」
耳元に口を寄せて石野さんのふわっとした甘い香りが鼻先を掠める。
「え?」
全部話してないって……なんのこと?
肌を震わせる低音に、背筋が仰け反る。だから、一瞬何を言われたのかよくわからなかった。
「すみません、今日はもう失礼します」
そう言うだけで精一杯だった。スツールから立つとユラッと身体が揺れて、石野さんに腕を支えられる。
「気をつけてね」
石野さんの誘惑を振り切るように、私はなにも返事をせずにルシェスを後にした――。
「きっと長嶺はまだ自分のことを全部君に話してないはずだよ。それでも彼を信じて結婚するの?」
耳元に口を寄せて石野さんのふわっとした甘い香りが鼻先を掠める。
「え?」
全部話してないって……なんのこと?
肌を震わせる低音に、背筋が仰け反る。だから、一瞬何を言われたのかよくわからなかった。
「すみません、今日はもう失礼します」
そう言うだけで精一杯だった。スツールから立つとユラッと身体が揺れて、石野さんに腕を支えられる。
「気をつけてね」
石野さんの誘惑を振り切るように、私はなにも返事をせずにルシェスを後にした――。