かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「すまない、芽衣。週明けに急な海外出張が入ってしまった。婚姻届、少しだけ提出を待ってくれないか?」
翌日、長嶺さんにそう言われて私は心底ホッとした。本当なら、今すぐにでも「やっぱり結婚はできません」と言うべきなのだろうけど、出張前に余計な波風を立てたくなくて、私は平静を装った。
長嶺さんは石野さんの名刺を見たあの夜からどことなくぎこちない。私に乱暴をしたとひたすら謝っていたけれど、謝らなければならないのは私のほうだ。
「大丈夫ですよ。それに、まだ恭子さんからサインいただいてなくて……」
「え? まだなのか? なるべく急ぐように俺からも言っておくよ」
そう言って長嶺さんは私を引き寄せると額にキスを落とした。いつもならこんな挨拶のようなキスにでさえ胸をときめかせていたけれど、こんなに冷たく感じたのは初めてだった。
長嶺さんの海外出張は一週間。行先はアラブ首長国連邦最大の都市であるドバイ。
観光業が盛んで巨大商業施設や大型プロジェクトが動く都市へ視察のため、あっという間にその日が来て旅立っていった。
翌日、長嶺さんにそう言われて私は心底ホッとした。本当なら、今すぐにでも「やっぱり結婚はできません」と言うべきなのだろうけど、出張前に余計な波風を立てたくなくて、私は平静を装った。
長嶺さんは石野さんの名刺を見たあの夜からどことなくぎこちない。私に乱暴をしたとひたすら謝っていたけれど、謝らなければならないのは私のほうだ。
「大丈夫ですよ。それに、まだ恭子さんからサインいただいてなくて……」
「え? まだなのか? なるべく急ぐように俺からも言っておくよ」
そう言って長嶺さんは私を引き寄せると額にキスを落とした。いつもならこんな挨拶のようなキスにでさえ胸をときめかせていたけれど、こんなに冷たく感じたのは初めてだった。
長嶺さんの海外出張は一週間。行先はアラブ首長国連邦最大の都市であるドバイ。
観光業が盛んで巨大商業施設や大型プロジェクトが動く都市へ視察のため、あっという間にその日が来て旅立っていった。