かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません

終章 病めるときも、健やかなるときも

「な、長嶺さ……んっ」

部屋へ着くなり、いきなり壁に押し付けられて強引に唇を奪われる。長嶺さんから漂うワインの香りのせいか、それとも性急に求められていることにか、考える間もなくクラクラと酔いが回ってきそうだった。

「君、さっき石野にキスされてただろ？」

すでに上がった息を弾ませながら責めるように問われる。長嶺さんの瞳には深い嫉妬の色が滲んでいた。

「見てたんですね……」

「当たり前だ。一気に頭に血が上ったよ。殺意を抱くくらいにな。嫉妬で気が狂いそうだ」

あれは不意打ちで……。と、口を開きかけた瞬間、そんな言い訳も許さないと言わんばかりに唇を貪られる。噛みつくような荒々しいキスに翻弄されて、身体から余計な力が抜けていく。

あっという間に服を脱がされ、身体を絡ませながらシャワールームへ転がり込むと、余計に互いの息づかいが反響して羞恥を煽られた。

「どこにキスされた？　今すぐ洗い流す」

シャワーヘッドに手を掛け、勢いよくお湯を出すと長嶺さんは丹念に私の顔を洗いだした。

「メイクが……」

「そんな化粧なんかしなくても、君は充分可愛い」

「あっ……！」

シャワールームが湿気で温度が上がっていく。湯舟に浸かっているわけでもないのに身体がのぼせてきた。

「そのまま壁に手をついて」

おずおずと壁に両手をつくと、私はそのまま長嶺さんに後ろから抱かれた――。