かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「まさか、俺が佐伯と事務所で話しているのを聞いていたのか?」
「すみません。盗み聞きするつもりはなかったんですけど、偶然……」
あの日、いつも明るい笑顔の恭子さんが取り乱しながら泣いていた。そのときのことを思い出すだけで胸が張り裂けそうだ。
「もしかして、君、全然気がついてなかったのか?」
これはすべて初めからなにもかもが茶番だったのだ。なんで気がつかなかったんだ?馬鹿だな。と言われているようで吸い込んだ息を吐きだせなくなる。
「私、あんまりこういう色恋には疎くて……あはは、馬鹿みたいですよね。恭子さんに長嶺さんと結婚するって言ったとき、様子が変だったんです。なんで気づかなかったんだろ……私、ほんとに……」
じわじわと涙腺が緩んで、喉の奥からこみ上げてくるものを必死で堪えていると、長嶺さんが私の手とぎゅっと握った。
「はぁ、そんな勘違いするなんて……芽衣、俺は君以外の女性と結婚するつもりなんてない。それに、俺と佐伯が恋人だなんて思ってるみたいだが、あいつとは決して結ばれることはない。永遠にな」
「どうしてですか? だから私と結婚しなければ――」
「どうしてだって? それは佐伯が男だからだ」
なんとか長嶺さんの手から逃れようと忙しなく指先を動かしていた私は、長嶺さんの言葉を聞き逃しかけ、一拍置いてから「はっ!?」と顔をあげた。
「すみません。盗み聞きするつもりはなかったんですけど、偶然……」
あの日、いつも明るい笑顔の恭子さんが取り乱しながら泣いていた。そのときのことを思い出すだけで胸が張り裂けそうだ。
「もしかして、君、全然気がついてなかったのか?」
これはすべて初めからなにもかもが茶番だったのだ。なんで気がつかなかったんだ?馬鹿だな。と言われているようで吸い込んだ息を吐きだせなくなる。
「私、あんまりこういう色恋には疎くて……あはは、馬鹿みたいですよね。恭子さんに長嶺さんと結婚するって言ったとき、様子が変だったんです。なんで気づかなかったんだろ……私、ほんとに……」
じわじわと涙腺が緩んで、喉の奥からこみ上げてくるものを必死で堪えていると、長嶺さんが私の手とぎゅっと握った。
「はぁ、そんな勘違いするなんて……芽衣、俺は君以外の女性と結婚するつもりなんてない。それに、俺と佐伯が恋人だなんて思ってるみたいだが、あいつとは決して結ばれることはない。永遠にな」
「どうしてですか? だから私と結婚しなければ――」
「どうしてだって? それは佐伯が男だからだ」
なんとか長嶺さんの手から逃れようと忙しなく指先を動かしていた私は、長嶺さんの言葉を聞き逃しかけ、一拍置いてから「はっ!?」と顔をあげた。