かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「俺がコンサルタントとしてパリで仕事をしていたとき、親父の右腕として長嶺不動産で働いていた叔父が亡くなって、上層部に大きな穴が空いてしまったんだ。そこで親父に初めて頭を下げられて『うちの会社に入って支えて欲しい』って懇願された」
なんとなく自分の身の上と重なるものを感じて、私はそのときの長嶺さんの心の葛藤が手に取るようにわかる気がした。
「同じ時期に君が新人賞を取ったあのコンテストで俺は最優秀賞を受賞することになっていたんだが……そのときにはもう俺は帰国して親父の会社に入ることを決めていた。正直迷ったよ、いつか自分の会社を立ち上げたいなんて夢まで抱いてたしな」
私もパリで順調に仕事をこなしていたとき、突然父が亡くなり帰国を余儀なくされた。だからこそ、彼の話は私の胸に深く突き刺さった。気を抜けば、今にも視界が霞んで目が潤みそうになる。
「まぁ、何を言われようと俺の決意は変わらなかった。最優秀賞は未来のないコンサルタントに与えられる賞じゃない。だから受賞を辞退したんだ。その後、石野が受賞したって聞いて……あいつがあんなふうに思ってたなんてな。けど、石野の気持ちもわからなくはない」
静かに語る長嶺さんの横顔を見て、ああ、そうだったのか、と理解する。
散々罵られて、ひどいことをされても冷静でいたのは……石野さんの気持ちをわかっていたからなんだ。
なんとなく自分の身の上と重なるものを感じて、私はそのときの長嶺さんの心の葛藤が手に取るようにわかる気がした。
「同じ時期に君が新人賞を取ったあのコンテストで俺は最優秀賞を受賞することになっていたんだが……そのときにはもう俺は帰国して親父の会社に入ることを決めていた。正直迷ったよ、いつか自分の会社を立ち上げたいなんて夢まで抱いてたしな」
私もパリで順調に仕事をこなしていたとき、突然父が亡くなり帰国を余儀なくされた。だからこそ、彼の話は私の胸に深く突き刺さった。気を抜けば、今にも視界が霞んで目が潤みそうになる。
「まぁ、何を言われようと俺の決意は変わらなかった。最優秀賞は未来のないコンサルタントに与えられる賞じゃない。だから受賞を辞退したんだ。その後、石野が受賞したって聞いて……あいつがあんなふうに思ってたなんてな。けど、石野の気持ちもわからなくはない」
静かに語る長嶺さんの横顔を見て、ああ、そうだったのか、と理解する。
散々罵られて、ひどいことをされても冷静でいたのは……石野さんの気持ちをわかっていたからなんだ。