かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「ああ、きっかけは俺だが、彼はその話を快く承諾してくれた。以前、店があった場所は数年後に区画整理で立ち退きが決まっていたからな。それを考えてのことだった。けど、表面上は人気の店ということで名が知れていたが、実際の内部事情は違った。なかなかこちらの目指している売り上げの数字に届かなくて、何度も会議で店の撤退が議論されていた」
「え……?」
「元コンサルタントとしての経験を活かしたくて開発運営管理部に籍を置いたんだ。なんとか俺の力で上層部の意見を突っぱね続けていたが、パティスリー・ハナザワを贔屓目にしていることが立場上難しくなっていったんだ。複数の店を抱える商業施設っていうのは、そういうところが融通が利かなくて困る」
「だから父の娘である私に依頼したんですね……」
長嶺さんは父の店を守るべく、ずっとひとりで戦ってきたのだ。
やっぱり私……長嶺さんが好き。こんな人、もう後にも先にも現れない。私や父のことをずっと前からこんなにも陰で支えてくれてたなんて。
そう改めて自覚した瞬間、それは津波のように胸になだれ込み、胸にわだかまるすべての迷いを押し流して行こうとした。
「石野に嫌われるのが怖いのか? って言われたとき、反論できなかった。心のどこかで後ろめたさを感じていたと気づかされてさ……まったく、俺はどうしようもなく情けない男だな」
「そんなことないっ!」
「え……?」
「元コンサルタントとしての経験を活かしたくて開発運営管理部に籍を置いたんだ。なんとか俺の力で上層部の意見を突っぱね続けていたが、パティスリー・ハナザワを贔屓目にしていることが立場上難しくなっていったんだ。複数の店を抱える商業施設っていうのは、そういうところが融通が利かなくて困る」
「だから父の娘である私に依頼したんですね……」
長嶺さんは父の店を守るべく、ずっとひとりで戦ってきたのだ。
やっぱり私……長嶺さんが好き。こんな人、もう後にも先にも現れない。私や父のことをずっと前からこんなにも陰で支えてくれてたなんて。
そう改めて自覚した瞬間、それは津波のように胸になだれ込み、胸にわだかまるすべての迷いを押し流して行こうとした。
「石野に嫌われるのが怖いのか? って言われたとき、反論できなかった。心のどこかで後ろめたさを感じていたと気づかされてさ……まったく、俺はどうしようもなく情けない男だな」
「そんなことないっ!」