かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
アリーチェ銀座をひと通り見て回ると、すでに日も暮れていた。

今、日本でどんなことが流行っているのかわくわくしながら店を物色……なんて思っていたけれど、さきほどのスタッフの会話が頭から離れなかった。

まぁ、そうだよね……スタッフにとっては不安だよね。

パリで仕事をしていたときもそうだったけれど、なぜかよく新人と間違われた。きっとその原因は私の童顔のせいでは……と思い、眼鏡をかけてみたりしたけれど「そんな教育ママみたいな眼鏡やめろ」「クライアントに威圧感を与える」「似合わない!」などの大不評で今はコンタクトをしている。

スタッフからあんなふうに言われてすごく傷ついたわけじゃない。パリで築いた基盤を捨て、父の店を挽回し、みんなの期待に応えなければ……というプレッシャーに押しつぶされそうになっている弱い自分が嫌で悶々としていた。

こうなったらどうにかして気持ちを切り替えなきゃ……うーん、気分転換といったら……やっぱりお酒かな?

正式な業務開始は明日からだ。だから、今は勤務時間時でもないしプライベートの時間でもある。

それに仕事終わりに飲めるような場所も知っておきたいし……と都合のいいように考えつつ、フロア案内を目で追っていくと、最上階に“ルシェス”というレストランバーがあるのを見つけた。
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