かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
やっと今日一日が終わった。

帰りに買っていったケーキも会社の人たちに喜ばれて、仕事の息抜きにちょうどよかったみたいだ。それに、私がコンサルタントとして担当することに不安をこぼしていた販売スタッフの人たちからも「本当に助かりました! ありがとうございました!」「あのお客様、へそ曲げるとしばらく店来なくなっちゃうんで……」と、おおげさに感謝されて私も少しモヤっとしていたものが晴れた。

これから長嶺さんの家に行くのかぁ、なんか緊張するな……。

「お疲れ様でした」

まだオフィスに残っている社員に挨拶をして上着を羽織る。秋も深まりつつあり、最近は夜になると肌寒い日が続いていた。

会社のエントランスを出ると、すっと冷気が首筋に入ってきて思わず身震いする。

まだホテルの部屋全然片付けてなかったんだよね、急がなきゃ。

私は銀座のネオンが照らす街中を、足早に帰路へ向けた――。
< 45 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop