かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
よし! 忘れ物はないね。
ホテルに戻り、荷物をまとめ終わって気がついたら二十二時を回っていた。
遅くなっちゃったな……。
ひとこと長嶺さんにメールをしようと思ってスマホを手にしたとき、ちょうどタイミングよく彼から電話がかかってきた。
「もしもし?」
『お疲れ。今まだホテルの部屋か?』
「すみません、遅くなってしまって。まだホテルにいて……」
『じゃあ、支度できたらロビーに下りてきな、そこで待ってるから』
「え? 待ってるって、あっ」
長嶺さんは言うだけ言って一方的に電話を切ってしまった。
もしかして、迎えに来てくれたのかな……?
そんな淡い期待を抱きつつ、私は片手にスーツケース、肩にボストンバッグを引っ提げると急いでエレベーターでロビーへ向かった――。
「お待たせしました」
エレベーターの扉が開くと、すぐに長嶺さんの姿を見つける。
「お疲れさん。いや、全然待ってない。荷物大変だろうと思って車で迎えに来た」
長嶺さんは仕事終わりに直接ここへ来たような恰好だった。上品なダークブルーのスーツがよく似合っていて、さっき店で長嶺さんらしい後ろ姿を見かけたけれど、やはりあれは見間違いではなかったと確信する。
「わざわざすみません」
「なんだ、荷物はこれだけか?」
「はい」
長嶺さんが意外に思うのも無理はない。パリから引っ越してきた割には自分でも身軽だと思う。荷物の中身はほとんど菓子作りに使う道具ばかりで、後は適当な服とちょっとした化粧道具くらい。必要最低限な物以外は夢への未練と共に全部捨ててきた。
ホテルに戻り、荷物をまとめ終わって気がついたら二十二時を回っていた。
遅くなっちゃったな……。
ひとこと長嶺さんにメールをしようと思ってスマホを手にしたとき、ちょうどタイミングよく彼から電話がかかってきた。
「もしもし?」
『お疲れ。今まだホテルの部屋か?』
「すみません、遅くなってしまって。まだホテルにいて……」
『じゃあ、支度できたらロビーに下りてきな、そこで待ってるから』
「え? 待ってるって、あっ」
長嶺さんは言うだけ言って一方的に電話を切ってしまった。
もしかして、迎えに来てくれたのかな……?
そんな淡い期待を抱きつつ、私は片手にスーツケース、肩にボストンバッグを引っ提げると急いでエレベーターでロビーへ向かった――。
「お待たせしました」
エレベーターの扉が開くと、すぐに長嶺さんの姿を見つける。
「お疲れさん。いや、全然待ってない。荷物大変だろうと思って車で迎えに来た」
長嶺さんは仕事終わりに直接ここへ来たような恰好だった。上品なダークブルーのスーツがよく似合っていて、さっき店で長嶺さんらしい後ろ姿を見かけたけれど、やはりあれは見間違いではなかったと確信する。
「わざわざすみません」
「なんだ、荷物はこれだけか?」
「はい」
長嶺さんが意外に思うのも無理はない。パリから引っ越してきた割には自分でも身軽だと思う。荷物の中身はほとんど菓子作りに使う道具ばかりで、後は適当な服とちょっとした化粧道具くらい。必要最低限な物以外は夢への未練と共に全部捨ててきた。