かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「また会えるなんて、そんなこと……多分ないと思います」

また会える気がするって、ないない! 絶対ない!

世界は広い、この地球上にいる人口の中から再び会う確率なんてほぼ皆無に等しい。

「じゃあ、俺が賭けに勝ったら……ひとつだけ願いを叶えてもらおうか。君が勝ったら、俺が君の願いをひとつ叶える」

「ええ、いいですよ」

何度も言うけれど彼とまた会うなんて絶対にありえない。だからそんな無責任な返事も簡単にできてしまう。

私が自信たっぷりに言うと、彼もよほど自負があるのかもう一度ニッと笑った。

「じゃあ、さようなら。パナシェ、ごちそうさまでした」

踵を返してアパートまで歩く。後ろを振り向けば、まだ彼はそこに立っているだろうか。振り向こうかどうしようか考えているうちにアパートまでたどり着いてしまい、結局一度も振り向くことなくそのまま私は部屋へ戻った。
< 7 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop