かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「遠のいた客足を追いかけるんじゃなくて、店の商品のランナップをもう一度洗い直すのも手だ。限定オリジナルとか、まったくの新商品を作るとかな」

「店の、限定オリジナル……? 新商品、そっか!」

これは盲点だった。長嶺さんに言われて鱗が落ちる。集客するためにはまず商品改善だ。

なんでこんなことに気づかなかったんだろ……。

「客が離れていったって気にするな。また集客することはできる。それに噂ってのは良くも悪くも広まるのは早いからな」

長嶺さんの瞳はいつ見ても綺麗に澄んでいる。吸い込まれそうになって思わず力がふっと抜けると、彼がやんわりと微笑んだ。

「店の求人広告も、スタッフが潤っている店舗の枠をパティスリー・ハナザワに回すように総務に掛け合ってみよう」

「でも、広告費なんて余裕は……」

「店内求人ポスターやホームページを使えば費用はほぼ0だ。それで集まるかは別だが、やってみないことには結果が出せないだろ?」

ああ、私はコンサルタントとしてまだまだ半人前だ。なにも求人広告を使わなくても求人する方法はほかにもあった。

「なるほど……」

「納得いったみたいだな」

そう言って、長嶺さんは私の胸にあるピンバッジを指で軽く弾いた。
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