かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません

第四章 ピンバッジ事件

長嶺さんと一緒に生活を共にするようになってから二週間が過ぎ、十一月に入った。

シェアメイトだと思えばいい、だとか初めは自分に色々と言い聞かせていたけれど、時が経てばそんなふうに身構えていたことすら忘れてしまうくらい、私は生活に馴染んでいた。我ながら自分の順応性には感心してしまう。それに、長嶺さんも私も仕事が忙しく一日中顔を合わせないこともあった。部署で大型のプロジェクトが動いているようで、今、大詰めらしい。

けれど、長嶺さんはどんなに忙しくても私にちゃんとした朝食を用意してくれる。今朝だって朝から焼き魚にふわふわのだし巻き卵、そしてほうれん草の味噌汁。

どれをとっても涙が出るくらい美味しかった。そして、先日のキスの感触もいまだに唇が覚えていて、気を抜くと疼きそうになる。