かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「はい、準備はできてます」
「じゃ、会議室行くぞ」
加賀美さんとオフィスを後にし、私は小脇に資料を抱えながらずっと気になっていたことを尋ねた。
「加賀美さんって、長嶺部長と面識があるんですか? 私がパティスリー・ハナザワの担当することをあらかじめ知ってたみたいで……私のことなにか話しました?」
「ああ、あの部長とは昔からちょっとした付き合いがあってさ。言ってなかったけど、パティスリー・ハナザワの担当をお前に、って向こうからご指名だったんだよ」
「え? ご指名?」
意外な事実に私は数回、目を瞬かせる。
「そうだよ。お前こそなんで長嶺部長と知り合いなんだって、こっちが聞きたいくらいだ」
「そ、それは……」
深い事情がありまして……。
なんで?と聞かれて口ごもる。
そんな私を横目に、加賀美さんは廊下を歩きながら噛み殺すこともせず「まぁ、どうでもいけど」と興味なさげに盛大にあくびをした。無造作な髪を掻いてこれから会議だというのに緊張感の欠片もない。
「じゃ、会議室行くぞ」
加賀美さんとオフィスを後にし、私は小脇に資料を抱えながらずっと気になっていたことを尋ねた。
「加賀美さんって、長嶺部長と面識があるんですか? 私がパティスリー・ハナザワの担当することをあらかじめ知ってたみたいで……私のことなにか話しました?」
「ああ、あの部長とは昔からちょっとした付き合いがあってさ。言ってなかったけど、パティスリー・ハナザワの担当をお前に、って向こうからご指名だったんだよ」
「え? ご指名?」
意外な事実に私は数回、目を瞬かせる。
「そうだよ。お前こそなんで長嶺部長と知り合いなんだって、こっちが聞きたいくらいだ」
「そ、それは……」
深い事情がありまして……。
なんで?と聞かれて口ごもる。
そんな私を横目に、加賀美さんは廊下を歩きながら噛み殺すこともせず「まぁ、どうでもいけど」と興味なさげに盛大にあくびをした。無造作な髪を掻いてこれから会議だというのに緊張感の欠片もない。