涙 のち 溺愛



いい上司に恵まれた。
本当に。

強がってはみたものの、正直手も心もガタガタと震えている。

仕事なんか、出来る状態じゃない。

「──ありがとうございます。
お言葉に甘えます」

先に声を発したのは、青山だった。

私も、ペコリと頭を下げて同意した。


──どうやって、片付けて。
────どうやって、蓮美さんの運ばれた病院まで行ったのか、正直記憶が曖昧だ。

気がついたときは、蓮美さんの病室で。

私と青山の前で、貴史と蓮美さんは、土下座していた。

「ごめん、本当に…申し訳ない。
でも、蓮美のお腹に子供がいるんだ。

──どうか、別れて欲しい」

「──っっ!!!!」

逆上した青山が、声にならない声を上げて、貴史の胸元を掴み挙げる。

──殴られる覚悟をしたかのように目を閉じて、されるがままになっている、貴史。

「やめて!!私が悪いの!!私がっ…!!」

泣きながら訴える、蓮美さん。



─────空しい。
─────────虚しい。


私は、そっと青山の肩に触れた。




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