涙 のち 溺愛




目眩が酷いなか、横を見ると、椅子に座って肘を膝について、項垂れている青山が、見えた。

「あ…お……やま……」

ガラガラになった声で、青山を呼ぶ。

はっと頭を上げた青山が、椅子を近くに持って来て座った。

「江藤…」

青山も吐いたんだろうか、声がガラガラだ。


「青山、だ…いじょ…ぶ?」

「大丈夫はお前だろ。気を失うまで吐くやついるか?

トイレから出てこないし、看護士さん探して見て貰ったら倒れてるし。

寿命縮まったわ」

苦笑している。

私も、おそらく似たような表情をした。

「──ホント、バカだよねぇ……」

言いながら。
泣ければ、きっとよかった。

それで少し救われて、新たな一歩を遠からず踏み出せたかもしれない。


だって、青山は泣いたもの。
男だけど、素直に潔く。




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