涙 のち 溺愛
「──俺な、ずっとお前を見てた」
俯く私に、とても優しい声で、青山が言った。
「あの件があって、お前とつるむようになって。
いつまでも傷口を塞げないまま、それでも顔を上げて、前を向いて頑張ってるお前を。
太陽を向く向日葵みたいに、ずっと見てた。
俺が立ち直れたのは、お前が太陽として俺の中に居てくれたからだ」
「──やだな、大袈裟だよ」
私は苦笑した。
そんなご立派なモノじゃないのは、誰よりも私が知ってる。
ただの意地だから。
そして、こんなこと言い出した青山の真意もわかった。
──これは、『同情』みたいなものだ。
ずっと恋人ができない私に対しての。
それじゃ、立ち直った意味がない。
私は、悪戯っぽく笑って言った。
「それに、ずっと見てたって、あんた彼女いたじゃない!」
口を開けたり閉じたり、何か言うのを迷っているような風の青山。
私は、首を横に横に振った。
「勘違いしないで、責めてるんじゃないの。
尊敬してんの。
青山は、ちゃんと立ち直って、前に進んでる。
そのまま進めばいいんだよ。
ていうか、進んで欲しい。
私に恩義を感じる必要はないよ。
青山が彼女を作って幸せそうにしてると、私も救われるよ」