涙 のち 溺愛
「いやっ!怖い、怖い、こわいっ!!
もう、あんな思いするのは嫌っ!!
わかってたんでしょ?!
私が怖がってるの!!
わかってるのに、何でこんな酷いことするのよ!!」
青山の胸を叩きながら、私は子どものように泣きじゃくっていた。
───散々、叩いて罵って泣きじゃくって。
どのくらい、時間が経ったのだろう。
私は、泣きつかれて。
ぐったりと、青山の胸に凭れかかっていた。
痛かったろうに。
涙でスーツをグショグショに濡らしてしまったのに。
青山はずっと、私を抱きしめてくれていた。
言葉よりずっと、『絶対に側にいる』という気持ちが、体温で伝わってくる。
「──ごめ……あおやま……。
わたっ、しっ……酷いことっ……いった……」
泣いた名残でしゃくりあげながら、私は青山を見上げて謝った。
そして、その頬も濡れていたのを知る。
「───俺の方こそ、泣かせてごめん。
ちゃんと分かってたんだ。
お前が、本当の意味で立ち直ってないこと。
傷を無かったことにして、無視してきたこと。
無理して俺を励まし続けたこと。
全部、分かってた」
青山は、私の顔を自分の胸に押し付けた。
そして、もう一度、ごめんなと囁いた。
「それでも……お前を傷つけても、泣かせても。
どうしても、俺の人生にはお前が必要なんだ。
俺、生涯を共にできる、共にしたいと心から願うのは、もうお前しかいないと確信できてるんだ。
我儘で勝手なのは分かってる。
だから、俺がお前のそばに、ずっといて。
何千回でも何万回でも、お前を愛してるって証明していくから。
もう怖がらなくていいって、証明していくから。
お願いだ、言って。
側にいていいって。
ずっと、側にいていいって。
お前が俺を愛さなくても、俺が二人分愛するから。
お前は、俺に、たったひとつ。
側にいるのを許してよ」