涙 のち 溺愛
「お前が怖がってるのは、わかってる。
そのままでいいんだ。
俺を疑って疑って、気を許さなくていい。
──後は、俺に任せとけ」
左腕で私を胸に抱えたまま、右手で私の髪を優しく撫でる青山。
それはとても、幸せそうな手つきで。
早かった青山の心音も、ゆっくりと落ち着いてきて、眠気を誘うほどだ。
青山の体全体が、纏う雰囲気が。
今が『幸せ』だと、私に訴える。
──うっかり、私も幸せを感じそうになる。
貴史から、こんなに強い想いを、感じたことはなかった。
私が、好きなばかりで。
そっか、2年も付き合ったのに、彼の私に対する愛情は、そんなに増えなかったのか。
そりゃ、他に目がいくわね。
私は、苦笑した。
──そうか、最初から間違ってたんだ。
好きになる相手を。
呼び掛けても、返事がなければ空しいだけ。
愛も、きっと同じなのね。
じゃ、少なくとも、今。
私は、青山の『愛』を、受け取ってはいけない。
答えられるか、わからないのだもの。
よし、と気合いを入れて、青山にそれを告げようとして、体を離そうとした。
──なのに、何故。
体が、動いてくれないの。