涙 のち 溺愛
「──わかったから、もういい、やめて」
どんどん顔面の温度が上がっていくので、私は早々に白旗をあげた。
「とりあえず、今日は帰っていい?
明日必要な書類はもうできてるから、明日また残業するから」
「いいよ、飯食って帰ろう」
当然のように言う青山に、私は手をブンブン振った。
「いやいや、独りで帰ります」
「独りで帰すわけないだろ。
──もう逃がさないから」
「え、後半が聞こえなかった。何?」
「何でもない、俺も腹減った。
前よく行ってた定食屋に行こうぜー!」
……流石青山、断りにくいところを持ってきた。
あそこの天ぷら定食は、絶品なのだ。
「──わかった、行こう」
手のひらで転がされてる感満載だが、天ぷら定食には勝てない。
あそこなら、泣いてしまって酷い顔でも、許される気もするし。
私は立ち上がり、二人して仕事場に戻る。
これから先のことは、また考えよう。
そんなことを、思いながら───