涙 のち 溺愛
それを無視して、彼は更に言いつのる。
「──何で断るか、聞いていい?
俺、結構モテると思うんだけど。
買い物件だと思うよ?」
「え、何?プライドに障った?
大丈夫大丈夫、青山はカッコいいよー(棒読み)」
「それはわかってる。
お前が俺と付き合えない理由が知りたい」
わかってるだと?!
私は顔をしかめる。
こちとら、『可愛い』も『美人』も言われたこと、ない!
ついでにそんなにモテたこともないわ!
プンプンしてると、頭をガシッと鷲掴みされ、視線をきっちり合わせられた。
ギリギリと指先に力が入って、頭を絞めてくる。
ちょっと!これ、女子にすること?!
私は涙目で睨み付けた。
それに負けない強い眸と口調で、青山は私に言い放った。
「話を逸らすな!
俺は、ちゃんと、理由を、聞きたいの!」
「痛い痛い、頭割れる!
わかった言うって!!」
離れた手の後に、自分の手を置く。
そうやって『手当て』しつつ、恨めしそうに彼を見た後。
ゆっくりと目を閉じる。
深呼吸をひとつ。
大丈夫、私は揺らいでない。
そして、目を開けて。
青山の眸をしっかり見ながら、でも、悪戯っぽく笑って私は言った。
「───理由は色々あるけど、一番は、やりたいことがあって、彼氏とか作る余裕がないってことかな!
そのためにも、お金貯めたいし。
残業したいし。
それに、青山は同期で友達で上司じゃない。
それが恋人とか、ちょっと想像できないよ」
────お願い、誤魔化されて。