涙 のち 溺愛


ほぼ貴史と同じ時に飛び込んできた青山も、呆然と立ち竦む。

貴史は大事そうに蓮美さんを抱き上げ、
決意を持った眸で私を見て言った。

「和奈、いや江藤。救急車は俺が付き添うから」

呆然として何も言えない私にそう言って、貴史は部屋を出ていった。




暫く立ち竦んでいた私は、何故だかゆるゆると青山の方を見た。
青山は、青ざめた顔で、ドアを睨んでいた。

その表情で。
全て、悟った気がした。


二人の、浮気──いや、心変わりを。






< 8 / 30 >

この作品をシェア

pagetop