涙 のち 溺愛


「───江藤」

視線は、いつの間にか自分の膝に落ちて。
他の人にも声をかけられていたけど、反応できなかった私。
どのくらい、時間が経ったのだろう。

青山の、何とも言えない──溶岩のように煮えたぎったような、氷山のように固く凍ったような──不思議なトーンの声に、ゆっくりと顔を向ける。

「俺たち、確かめないと」

決意を秘めた声に、私も体に力を込める。

周囲が固唾を飲むのがわかる。

会社にオープンにしてたから、皆、私たち4人のことを知っている。

私は、考えるのを拒否した真っ白な頭で、譫言のように言った。

「まだ、昼過ぎです。

プライベートは、仕事が終わってからにしましょう」


そこではっとした課長が、「江藤の言うとおりだ!皆、仕事に戻れ!」と指示してくれて。

それぞれ、何か言いたげにしながら、もしくは何人かでヒソヒソ話しながら。

其々の部署に戻っていった。




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