思いを乗せたカクテルをあなたに

「え？今日、定休日なんですよね？」

「はい。カミラさんたちには、特別です。気軽に話せそうな場所といえば、今はあそこしかありません」

カミラの問いかけに、洋子はそう言って微笑んだ。

「……分かりました。行きましょう」

カミラはうなずく。そして、カミラたちは、洋子の経営する店に向かった。



「なるほど……」

カミラは、洋子の店の中で司の話を傾聴する。大学生の司は、寮から実家に帰ろうとした際に事故にあって亡くなった、と話している。

「それで、母さんは悲しんでて……俺、大学院に行くんだって伝えて、母さんを喜ばせたかったのに、何で……泣かせる羽目になったんだろう……」

司の頬に、一筋の涙が伝う。司は、腕で涙を拭うと、溢れそうな涙を堪えた。

「司さん。涙は、堪えてはいけません。泣いて良いんです。決して恥ずかしいことでは、ありません」

カミラが微笑むと、司は泣き崩れる。そんな司を、カミラと洋子は無言で微笑みながら見ていた。

「……司さん。これを、あなたに差し上げます」

司の前に、洋子は茶色っぽいカクテルを置く。司は、そのカクテルを見ると驚いた顔を洋子に見せた。

「こちらは、オールド・パルと呼ばれるカクテルです。カクテル言葉は『思いを叶えて』。私たちが、司さんの思いをお母様にぶつけてあげます」