思いを乗せたカクテルをあなたに
カミラが司の家に行こうと、用意をしていると、バーの扉が開いた。
「すみません。今日はお休みで――」
洋子は、入って来た女性に言う。女性は、今にでも死んでいきそうな顔だった。その顔を見た洋子は、ハッと息を飲む。
「分かっています。カクテルを飲みたくて、ここに来たんですけど……本当に開いていないのかと思い、開けたら開いたので入りました……」
「母さん……!」
司は、バーの入口付近にいる女性に向かって叫んだ。すぐに、洋子は「すみません」と出ていく女性に向かって言う。
「待ってください。今日、私の友達のために開けたのですが……あなたも一緒にどうですか?」
洋子の言葉に、司の母、木村 宏美(ひろみ)は驚いた顔を見せた。
「代金は、いただきません」
洋子は、宏美に向かって微笑む。何とかしてでも、宏美を引き止めておきたかったのだ。
「……本当に良いのですか?」
「はい」
洋子の言葉に、宏美はもう一度中に入って来た。その事に、カミラと洋子は安堵のため息を心の中で付く。
「初めまして。私は、福宮 カミラと言います」
カミラは、宏美に向かって自己紹介をした。宏美も「……木村 宏美です」と自己紹介をする。
「……カミラさん」
洋子は、紫色のカクテルを持って、カミラの前に置いた。