思いを乗せたカクテルをあなたに
亡くなった彼は、カクテルを渡したい
カミラは、今日も人間界を歩く。その時、誰かとぶつかり、カミラは慌てて頭を下げた。
「すみません。私の不注意で……」
カミラが顔を上げると、半透明の男の子は驚いた顔をし、カミラと目を合わせる。
「……て、あなた……」
カミラが驚くと、男の子は「……俺の姿が見えているんですか?」とカミラに問いかけた。
「はい。私、生まれつき強い霊感を持っています」
カミラは、すぐに男の子に微笑む。カミラとぶつかったこの男の子は――幽霊だ。
「そうでしたか……あなたに、お願いがあります。聞いてくれませんか?」
思い詰めた顔を見せた男の子の言葉に、カミラはうなずいた。男の子は、安堵のため息をつく。
「……俺の名前は、木村 司(きむら つかさ)と言います」
司と名乗った男の子は、頭を下げた。カミラも「福宮 カミラです」と頭を下げる。
「あれ?カミラさん」
司が口を開こうとした時、洋子の声がカミラの耳に入った。
「……洋子さん……どうしてここに?……お店の方は……」
カミラの問いかけに、洋子は「今日は、定休日です」と答える。
「話は、聞いていました。私もご協力します」
洋子は、司に目を移した。司は、洋子を驚きながら見る。
「私は、如月 洋子と申します。小さなバーを経営するバーテンダーです。話なら私のお店で聞きますので……行きましょう」