愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「あーあ、美人のカオが熔けてる」

右隣の遊佐が、相変わらず極道には見えないキレイ目な顔を崩して悪戯気味に。

「・・・そうやって餌付けされてるのか、お前」

反対側からは仁兄の、どことなく呆れたような低い声。

「あらバレちゃった?」

わざとしなを作っておどけてみせるユキちゃんと笑い合ったり。いつもどおり端っこで黙って飲んでる榊をいじって遊んだり。みんなと一緒にいるだけで、何にも代えがたい宝物をもらえてる気がする。

遊佐に仁兄と結婚しろって言われた時は。この世の終わりってくらいここでも泣いた。あたしが知らなかった遊佐の涙もきっと・・・ここだから流せた。

笑顔も悲しみも、たくさん持ち込んでもユキちゃんは、広い大空みたいに受け容れてくれて。亞莉栖はココロの拠りどころ。これからもずっと。あたし達は“家族”だよねユキちゃん。


「はいはーい、じゃあプレゼント交換~!」

カクテル3杯目に突入して、ちょっと酔いが回り始めのあたしが気分よく挙手。交換っていっても。あたしからみんなに一つずつ。みんなから一つずつ、あたしに。

仁兄には悩んでカフスボタン。今日もだけどやっぱり仕事柄スーツが多いし。榊にはカシミヤのマフラー。真冬でもあんまりコート着ないし見てるこっちが寒いから。ユキちゃんにはフットマッサージャー。立ちっぱなしで疲れる足を癒やしてほしいなーなんて。

で、遊佐には。わりと小さめなショップバッグ。

「・・・サンキュ」

後ろ頭を捕まえられて、やんわりキスのお返し。目が合って色気のある淡い笑みが覗いた。

中身はね。実は名刺入れ。まだ見合わないってあんたは笑うかもしれない。足りてねーよって。
でも違うよ、そんなことない。遊佐哲司の息子として、木崎仁の弟として。あんたは堂々と自分を売っていいの、見せつけていいの。(さくら)の紋が入った一ツ橋組の遊佐真の名前を。

あんたの誇りは本物でしょ。自分をもっと信じてよ。

・・・そう願いを込めて一生けんめい選んだの、伝わるといいな。・・・ね、遊佐。

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