愛は、つらぬく主義につき。 ~2
訪問が夜の9時になったのは、子供達が寝た頃のほうが落ち着いて話せるからっていう織江さんの希望だった。

「宮子さん・・・!」

待ちわびたように玄関に出迎えてくれた織江さんにぎゅっとハグされ、言葉にもならず二人でしばらく抱き合う。

「・・・いつまでやってんの結城」

うんざりしたような藤さんの声が聞こえて躰を離すと、明らかに痩せちゃったけど優しい笑顔は変わらない彼女と小さく笑い合った。

「遊佐さんも来てくださって、ありがとうございます」

「ウチの宮子がお世話になってるのに挨拶もなくて、スミマセン」

脇に立つ松葉杖の真が引率の保護者っぽく愛嬌たっぷりに言ったのを、織江さんは首を振って感慨深そうに微笑む。

「わたしこそ、ずっと宮子さんに励ましてもらって・・・。本当にお礼のしようもないくらいです」

「ならよかった」

あたしの頭を撫でながら淡く笑んだ真と目が合って。気恥ずかしさのあまり、わざとらしくも話の流れを別方向にぐぐっと折り曲げた。

「あっ織江さん。これ実家から相澤さんのお見舞いで言付かってきたんです!」

言って風呂敷づづみを彼女に手渡す。三段のお重。こしあん、ゴマ、きなこの、おばあちゃんお手製のぼた餅。

「実家って本家の・・・?」

目を丸くして、驚いたように後ろに立つ藤さんを振り仰ぐ織江さん。

「プライベートなんで固いコトは言いっこなしです。藤代さん」

真が涼しい顔で言えば。

「・・・もらっときなよ。てか早く上がってもらえ」

ぼた餅の風呂敷づづみを彼女の手から取り上げ、相変わらずの素っ気なさで藤さんは廊下の向こうに消えた。
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