愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「・・・今回の件」

若頭代理の風格を露わにおもむろにそう切り出して目を細めた。

「SNSで俺の殺しを引き受けたらしいが、おそらく晶が関わっている」

高津さんが? 

「クラブで二人組に金になる仕事があると持ちかけたのは、メテオに出入りしている女だと割れた」

「まさか・・・っ」

思わず口を突いて出て。自分で自分の口を塞ぐ。
まるで彼を庇ってるみたいに聞こえちゃったかもしれない。そうじゃなくて、だって・・・!

あたしを見やって無表情になってる真に、平静を装って言い繕った。

「なんかあの人らしくないやり方だって思ったから・・・」

「なんでそんなことが分かんの」

目が。真の目が死ぬほどこわい。

「らしくないのはオマエだよ。ユキ姉にも言われたろ、高津さんを甘く見るなって。・・・いい加減にしな」

冷えきった声で凄まれる。・・・本気のやつ。だけどそこはあたしも引かなかった。

「そういうんじゃないってば! 高津さんは相澤さんを苦しませたいだけで殺したいわけじゃ・・・っ」

思ってたことをそのまま。
確かめたいわけじゃないし理解したいわけでもない。ただ彼を『悪』って一括りにできないだけで。味方でもないし同情でもないんだけど。

その瞬間は。真の顔が般若のお面に見えた。こんな怒らせ方したのっていつぶり、ってくらい内心は。オオカミを前にぶるぶる震えて怯えてる哀れな子ヤギになってた。

「宮」

真が底冷えのする声でなにか言おうとしたのを相澤さんが静かに遮る。

「・・・俺自身じゃなく俺と関わる人間に近付くのが晶の常套手段だ。お嬢さんに付け入る目的で俺を襲撃させたとも限らん」
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