愛は、つらぬく主義につき。 ~2
織江さんが戻ってきて子供達の可愛い寝相の報告をされると、相澤さんの顔はもう父親そのもので。春から幼稚園に通い出す、雅ちゃんの入園準備の話にひとしきり和んだ頃合いを見て、お(いとま)することにする。


「宮子さん、今日は本当にありがとう、すごく楽しかった・・・! おばあさまにもよろしく伝えてね。遊佐さんも、次は子供達に会ってください」

「ぜひ。オンナノコの扱いはまあまあ得意かな、オレは」

破顔する織江さんに向かって、愛想よく笑って真がナンか言ってる。あんたの『まあまあ』は、商売(ホスト)できるくらい得意ってイミの『まあまあ』よねぇ?

「相澤さんも、しっかり治るまで無理はしないでください」

いちおう釘は刺してみた。仕事人間ぽいから、あんまりじっとしてないタイプだろうし。織江さんが気苦労しちゃいそうだなって先回りの老婆心。

「宮子お嬢さんにこれ以上のご心配をおかけしないよう、精進させてもらいます」

イケメン紳士の淡い微笑みに悩殺され、心臓が今にも溶けそうな甘い綿菓子と化しながら、玄関先で最後まで丁寧に見送ってもらった。




マンションの前まで榊が迎えに来てるはずで、下まで一緒に藤さんもエレベーターに乗り込んでくれる。
扉が閉まり小さな密室が下降し始めると、すかさず真が口を開いた。

「半グレの素人使って、わざと足がつくようにしたってコトですか」

「うちのキャバクラ(みせ)の裏口から出たとこを狙うくらいだからな。・・・おちょくるにもホドがあるっての」

「高津さんだって確証は?」

藤さんはチラッとあたしに横目を流し、素っ気なく答えた。

「本気で()る気もナシに引っかき回した目的がお嬢さん、・・・てならイロイロ納得できるって話だろ。結城のときの前科があるんだよ、こっちは」
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