愛は、つらぬく主義につき。 ~2
5-2
織江さんのところにお邪魔した次の日からは、通勤も完全送迎制になった。仁兄の迎えの時もあれば、榊だったり違う人だったり。・・・逆に拍子抜けした。会社をやめろって真が言わないこと。
頭を撫でて、『タクシーだって思えば便利だろ』って。笑ってるのに空気はどっか張ったまま、本心は違ってた多分。分かってんのに。甘えきって自分からなにも言わないあたしは、やっぱり卑怯なのかな・・・。




何週間かぶりに出社してみると、ちらちら刺さる視線がどことなく迷彩色だった。
女子トイレで偶然耳にしたのはなんでだか、あたしが仁兄の子供を妊娠した説。インフルエンザをこじらせたって理由にしたのに、どういう誤変換? ていうかさ、最終的に仁兄ってどんなキャラ設定されてんの?







当然ながら亞莉栖にもずっと顔が出せなかったから。会社から直送してもらい、しばらくぶりだった馴染みの扉をくぐる。

「ユキちゃん、ただいまぁーっ」

「おかえりなさい、チヨちゃん」

見た目は清涼系お兄さんなユキちゃんがいつも通り、にっこり笑って迎えてくれた。
ものすごく懐かしい人に会えたみたいに胸が詰まるだなんて。やだ、涙もろいよ、この頃のあたし。
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