愛は、つらぬく主義につき。 ~2
ユキちゃんは毎年クリスマス限定の可愛らしいブランドコスメをくれて。榊と仁兄には前もってこっちから欲しいものを逆指名。ほら、榊はいちいち考えるの面倒だろうし、仁兄なんかカワイさ余って桁外れのモノとか買ってきそうだし!

「ありがと、嬉しーいっ」

喜ぶあたしに、銀縁眼鏡の奥から満足そうに目を細める仁兄。こっちを一瞥して素っ気なく「・・・おう」ってグラスを呷る榊。ニコニコ笑顔が絶えないユキちゃん。

「宮子。手ェだして」

遊佐が半身傾けて左の掌を差し出すから。あたしも向いて利き手の右をお手みたいに。

「じゃなくてソッチ」

慌てて左手を乗せ替えると、遊佐はワークパンツの右ポケットを探り。親指と人差し指に摘ままれたリングをあたしの左手の薬指にそのまま嵌めた。

「うそ・・・」

思わず口から漏れた言葉。目を見開いてその一点を見つめたまま固まる。

曇りひとつない銀光を放つプラチナ。滑らかなウェーブラインのセンターには、少し平べったいひし形にあしらわれたダイヤモンド。雪の結晶? ううん、桜にも似た花びらの形・・・。

「え・・・遊佐、これ・・・?」

はまってる意味は分かってる、分かってるけど。結婚指輪だけでいいって言ったのに。だって。
この指にはもうずっと見えなくても指輪がはまってるじゃない・・・!

「オレの売約済みって名札。カッコつけさせな、こんくらい」

「ッ・・・遊佐ぁっ」

不敵そうに笑った顔があんまり愛しくて。目頭が熱く潤む。
遊佐のパーカーの袖をきゅっと握りしめて二の腕あたりに顔を埋めた。

「・・・ばかぁ、嬉しすぎてどーしてくれんの・・・」

鼻をすんとすすり上げる。

「んー? そこは“アイシテル”って言えば?」

頭の上に優しく乗った大っきな掌。

「・・・死ぬほど愛してるってば」

「知ってる」

クスリと聞こえて。髪を撫でられながらあたしは、痛いくらい切なくてしょうがない心にしっかり刻んでく。

あの時。力いっぱい背中を押して、あたしを掬ってくれた紗江とユキちゃんへの恩返しは。これからどんなことがあっても幸せでいるのを諦めないことだって。

いつか遊佐の脚が動かなくなる日が来ても。(あんた)が貫きたい極道を死ぬまで貫かせてあげられるのは、(あたし)だけだ・・・って。

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