愛は、つらぬく主義につき。 ~2
ユキちゃんはすぐには答えなかった。間を置いて静かに響く声。

「・・・どう見えるかは重要じゃないのよ。だからそうね・・・もしかしたら代理と晶の確執を知ってる人間に仕組まれたワナかもしれないし、最後まで真実に辿り着かないかもしれない。そういう世界でしょ、ここは」

並べ置かれたグラスに落とした眼差しからは、なんの感情も読み取れない。
言えることはね、と不意にあたしを見やる。

「だれも自分が信じるものを貫くしかないんだよお嬢。正解はあるようで、どこにもないから」

どこが『正面』でどっちが『側面』かは見る人次第・・・ってこと?

あたしの問いかけをそんな風に答えたユキちゃんは、すぐにママの顔に戻ってにっこり笑みを向ける。

「それよりチヨちゃん。マコトちゃんが悩みすぎてハゲちゃうんじゃない? 大丈夫?」

ハゲ・・・?!

「エッ? もしかして、またあたしのコトで泣かせたっ?」

「泣く寸前かしら?」

冗談ぽく言われてるけど心臓にぐっさり刺さる。

だって心当たりなんて丸っきりあるんだもん。
あたしに言いたいのを飲み込んでガマンして、何でもない顔してるのなんて知ってる。だけど。
真がなにかを迷って答えを出せないなら、それまで待とうって思ったの。
あんたが決めたんだったら。それがどんなコトでも受け止めようって思ったの!

「ああもう、なんでハゲるまで悩むかなっ?!」

マッシュボブの自分の髪を片手でクシャクシャっとして、カウンターに突っ伏した。

「そんなにあたしって頼りない? いっつも真に抱え込ませてばっかりで、これじゃあたしってただのお荷物だよ・・・っ。こんなんで奥さんて言える?! 榊にだって仁兄にだって心配と面倒しかかけてないっ、ほんとヤだもう・・・っっ」
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